介護は義務?親の介護は実子・兄弟間でどう担うべき?
江戸時代頃までは乳児期で亡くなることが多く平均寿命は30~40年、平均寿命が50歳を超えるのは戦後になってからのことです。これほど人間の寿命が延びるとは当時の人からすれば考えられなかったことでしょう。現在では、「人生100年」時代が到来したとされ健康寿命を延ばすことの大切さが叫ばれています。しかし、残念ながら誰もが健康のまま死を迎えることはできず、ほとんどの人は病院か自宅で最期を迎えることになります。最近では、クオリティ・オブ・ライフの観点からも自宅で家族に看取られながら死を迎えたいと望む人も増えています。
日本人の死亡率でも常にトップを占めるガンのほか脳梗塞や心筋梗塞、ケガなどにより、生活を余儀なくされることもあります。親に介護が必要となった場合、介護保険制度を利用しながら自宅で介護をすることが一般的となっています。昔は長男が家長として別格の扱いを受ける代わりに、家を継いだ長男が親をみるのが当然という慣習がありました。しかし、現在では核家族化も進んでいることから実家のある地域に長男をはじめ他の兄弟も居住していないこともあり、親の介護が実子の義務であることがわかっていてもなかなか面倒をみられない現実もあります。
目次
親の介護は兄弟の義務?
親の介護の義務について何か法的に定められたものがあるのでしょうか。民法には「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある」「「夫婦は同居し、互いに協力し、扶助しなければならない」とあります。未成年の場合には自力で生活をすることができないため、親が面倒をみなくてはなりません。扶養手当や児童手当などの経済的な優遇措置もあり、子供が経済的に自立していないため当然ともいえるでしょう。しかし、働いていたり、年金収入があったりする親が突然倒れた場合の介護は、未成年の場合と違って一概に言えない場合もあるでしょう。夫婦が互いに支え合うことから、まずは病気になっていない配偶者が面倒をみることが考えられますが、高齢である場合は負担が大きくなるとともに、時間差があるものの両親ともに介護が必要となることもあります。
夫婦で互いに支え合うことができない場合は、直系血族である子供が家族の一員として親を介護する必要があります。最近は少子化のため、息子、娘の立場で両方の実家の親の介護に関わらなければならないことも増えています。もし、兄弟がいるのであれば長男や長女など、1人に介護を任せっきりにせずに兄弟で分担をしなければなりません。食事や排せつなどの身の回りの介護を実際に労力を提供して介護する人、離れて暮らしてはいるが毎月の費用補助をしてたまに介護をしに帰郷する人など、役割分担をして兄弟全員でカバーすることが大切です。
介護の義務は放棄できる?
国主導による働き改革が進められています。長時間労働や多様な働き方の在り方などが問われていますが、そのなかには介護離職の問題も含まれています。子供が親の介護をしなければならなくなった場合、子供も成人して独立し家族をもっていることがほとんどでしょう。仕事と家庭をもちながら、親の介護まで手が回らないと考えるのも当然のことかもしれません。子供が独身の場合は、どうしようもなくて離職して親の年金で生活しながら、介護している現実もあります。親が一人で生活ができない要介護状態である場合、直系血族である子供には親を介護する義務が発生します。
最近では、配偶者が亡くなった後に籍を抜く「死後離婚」もあるといいます。夫が亡くなった後に、舅や姑の介護を継続することが辛く、経済的な負担も大きいことから離婚して介護の義務を放棄しようとするものです。法的には介護の義務は直系血族にあるとされていますが、世間体的に舅や姑と親族関係があるのに、介護を放棄するということに耐えられないのでしょう。
介護の義務を怠ると法律違反になる?
民法では介護の義務について定められていますが、介護の義務を怠ったり、放棄したりした場合、何らKの刑法上の責任が問われるのでしょうか。民法上では実子は血族として親の介護を行う義務がありますが、経済的余裕がないなどの理由によってどうしてもできない場合は仕方がないという解釈がなされることもあります。しかし、福祉サービスも受けずに放置するということは許されることではありません。
刑法218条には保護責任者遺棄罪について規定されており、未成年の子供ではなくても一人で生活することができない親と理解していて放置するのは、介護放棄(ネグレクト)とされ懲役3ヵ月以上5年以下の刑事罰に問われることがあります。自分の親を介護せずに罪に問われるということは人間としても恥ずかしいことでしょう。しかし、実際には経済的困窮を理由に親の面倒をみることができないということもあります。
まとめ
経済的に多少余裕があっても仕事や自分の家族の生活のため、思うように介護ができないという人もいるでしょう。直系家族に親の介護の義務があるのであれば、兄弟間で費用や労力を分担するとともに、介護保険制度や相談機関、行政機関を活用しながら少しでも介護の負担をしたうえで、親の介護に取り組むようにすることが大切です。