認知症の接し方のポイントは?
「両親や祖父母が認知症になる」という現実を、いちばん受け入れにくいのは家族かもしれません。
「昔は何の問題もなくできていたことが、できなくなった」「何度、言っても理解してくれない」「知らない間にいなくなる」などなど、信じたくない行動の数々に戸惑っている方も多いのではないでしょうか。
今回は認知症の方への接し方のポイントをまとめました。ご家族や友人など周りに認知症の方がいらっしゃる場合は、ぜひ参考にしてくださいね。
目次
認知症の方への接し方で家族が気をつけることは?
2017年現在、認知症患者は全国に推定で500万人いるといわれており、超高齢者社会の現在の日本では、今後、右肩上がりで増えていくだろうともいわれています。もはや認知症は国民病といっても過言ではない、他人事では片付けられないない病気なのです。
認知症の初期段階では「本人は問題行動を起こしていることを理解している」と考えられています。この間に家族は認知症であることを受け入れ、信頼関係を築くことが大切です。不安やストレスを与えるなど間違った接し方は、認知症を悪化させる危険性がありますので、十分、注意してください。
認知症の方への間違った接し方とは?
認知症は、判断する、理解する、記憶するといった知的機能が衰えていく病気です。最初は、物忘れ程度にしか感じないのですが、家族が何かおかしいと思ったときには、かなり症状が進行している場合も少なくありません。深く、静かに進行していくのが認知症なのです。
判断、理解、記憶といった部分が衰えていく反面、感情や欲望などが前面に出てくるため、食欲、性欲、睡眠など、本人が強く感じていた部分が問題行動につながっていくことも多くあります。
よく耳にする「ご飯を食べていない」もその1つなのですが、何度も「ご飯、ご飯」といわれると、腹が立ったり、怒鳴りたくなったり、無視したくなったりすることもあるでしょう。でも、その行動が問題なのです。認知症患者の場合、記憶などが衰えても感情的な部分は衰えていません。なぜ叱られているのか、理由は理解できなくても、叱られている、怒鳴られている、無視されていることは理解しており、不快な気持ちにされた思いだけが蓄積されていくのです。叱る、無視するなどの本人がストレスに感じる行いは、認知症の症状を悪化させる要因になる可能性がありますので、絶対に避けたい行いです。
認知症の方への正しい接し方とは?
次々に問題行動を起こす認知症の家族に、どう対処して良いのか悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
認知症の患者さんへの適切な接し方の基本は4つといわれています。
- 常に何らかの不安な気持ちを抱えていることを理解し、否定したり、訂正したりせず受け入れる。
- 認知症の方がリラックスして過ごせるよう、本人のペースに合わせる。
- ほめる、感謝する、相槌をうつなどして、認知症を方に受け入れてもらえていると感じてもらう。
- 言葉以外のコミュニケーション手段、スキンシップやジェスチャー、アイコンタクトで安心感を与えるようにする。
良い感情を残すようにし、自尊心を傷つけないようにすることが大切です。
被害妄想や徘徊などの認知症行動への対処方法
症状が進行してくると被害妄想や徘徊など、認知症独得の行動が頻繁にみられるようになります。こんなとき、どう対処したらよいのか考えてみました。
被害妄想で多いのは、「お金を盗られた」や「モノが無くなった」という妄想ですが、本人は無くなったこと自体でパニックになっている可能性がありますので、絶対に叱ってはいけません。また、すぐに見つけてしまうことも、「簡単に見つけるのだからやはり盗んだのでは」と一方的な不信感につながります。
どうしたらよいのかというと、まず、無くなった大変さを共感しましょう。そのうえで本人と一緒に探してあげましょう。本人が見つけやすいよう棚や引き出しなどへ誘導するのも手です。そして見つかったら「よかった」と一緒に喜んであげましょう。メインで看護する方は、「一番身近で、一番信頼のおける人物だ」と本人に受け入れてもらうことが大切です。
徘徊は、例えば住み慣れた自宅であっても本人にとっては違和感を覚える場所であり、居心地の悪い場所なのです。そのため安心できる場所を求めて探しているうちに、記憶障害があるために目的地を忘れたり、現在地点が分からなくなったりすることから、迷子になる、遠くまで行ってしまうことになるわけです。
徘徊を繰り返す家族がいる場合、自室に閉じ込めておきたくなりますが、そうもいきません。最近では携帯電話やスマートフォンのGPS機能などを利用して探す方法もありますが、洋服や本人が必ず履く靴に連絡先を縫い付けておくことをお薦めします。少し面倒ですが、認知症の方の行動は予測不可能です。二重、三重に対策を講じておきましょう。
家族の介護に疲れを感じた時はどうすべき?
同居しての介護や看護の大変さをいちばん理解していないのは、別居している家族だという人がいます。家族にとって認知症の看護は24時間365日、休みはありません。その大変さを1週間か1カ月に1度、しかも数時間しか面倒をみない別居家族に同列に語って欲しくないというのが本音ではないでしょうか。
認知症の方へは、本人の不安を理解し、思いやりもって接することが大切だと分かっていても、同居家族だからこそ逃げられない現実に腹の立つこともありますし、先の見えない看護生活に不安を感じることもあるはずです。それが当然なのです。看護する家族が無理を重ねると、介護疲れから介護うつになる可能性もあります。そうなる前に第三者や専門家、地域包括センターなどに相談をしてください。自分1人で抱え込まない。これが大切です。
まとめ
認知症は誰がなってもおかしくない病気です。1ついえることは、認知症の方は自分を理解して接してくれる人を頼る傾向があります。信頼できる人が家族にいるだけでストレスの軽減になり、安心して生活できるので、認知症の進行を遅らせることができる可能性があると考えられています。不安やストレスをいかに取り除けるかも、認知症の家族と接する際のポイントとなるでしょう。