介護放棄とは?放棄したい場合手続きは必要?
最近耳にすることが多くなってきたのが「介護放棄」という言葉です。
介護放棄をして、高齢者が亡くなったニュースを聞いた人も多いことでしょう。
今回はこの介護放棄について、いろいろとお話ししたいと思います。
目次
介護放棄とは?
介護放棄とは、文字通り「介護することを放棄する」ことです。
ネグレクトという言葉としても知られています。
実はネグレクトは育児放棄という意味で使われていたのですが、最近では介護にも当てはまるようです。
介護が必要な人に対して、それを行わないことを介護放棄といいます。
例えば、食事を与えない、おむつを替えないなど、介護が必要な人の生活に対して、すべての行為をやめる、つまり放棄してしまうことなのです。
家族などの「保護をしなければならない責任」のある人が、それを行わないと、法律(民法)に違反するとして、罪に問われることもあります。
介護放棄による高齢者の死亡事故が、ここ数年で件数が増加し、社会問題になっているのです。
なぜ介護放棄は起きる?
では、なぜ介護放棄ということが起こるのでしょうか。
その理由の一つとして、介護を必要とする家族の状態が悪化することが挙げられます。
介護を始めた最初のころは、おそらく簡単な介助(食事がとれているか確認する、生活の様子を見に行くなど)で、自分の時間を削ってということは少ないでしょう。
ですが、介護の場合、やはり年齢が高くなると状態も悪くなります。
認知症などが発症すると、介護の負担は増大して、「こんなはずじゃなかった」と思う人も少なくありません。
介護施設で働いているスタッフでさえも、認知症の高齢者への対応は複雑で難しいものです。
ですから、身内で認知症の介護をするのは、本当に大変です。
もちろん、寝たきりの介護も同様ですが、介護の負担が重くなると、心身ともにつらくなって、介護放棄に至るケースはとても多いのです。
さらに、家族の介護を、一人で抱え込んでいる場合にも、介護放棄は起こりやすくなります。
「自分の家族だから、自分がしっかりと介護をしなければならない」という強い責任感を持っていると、大変な状況を周りに知られないように頑張ってしまいます。
「介護サービスなどを活用すればいいのに」と思う人もいるかもしれませんが、一人で抱え込んでいると「誰かに頼るということはいけないことだ」と思い込んでしまうのです。
介護は毎日続きますし、終わりが見えません。
先のことを考えると、自分がどうなってしまうのかという大きな不安も出てきます。
心身ともに疲れ切ってしまい、最悪介護放棄ということになるのです。
そして、介護というのはかなりお金がかかります。
介護度によってかかる費用は変わりますが、決して安いものではありません。
そういった費用がかかることで、精神的な不安が大きく、介護放棄に至るケースもあれば、介護のために仕事を辞めざるを得ない状況に陥り、介護の費用を払えずに介護放棄ということも多いです。
自分の家族を養わなければならないのに、親の介護までとなると、精神的にどんどん追い込まれてしまうのかもしれません。
介護放棄で罪に問われる可能性は?
介護放棄は、罪に問われる可能性が高いです。
先ほどもお話ししましたが、「保護をしなければならない責任」がある人が、それを行わないのは、民法に違反するためです。「保護責任者遺棄致死罪」とか、「保護責任者遺棄致傷罪」という言葉を聞いたことはありませんか?
介護放棄はこういったことに当てはまってしまうのです。
子供の保護には親が責任ある立場となりますが、親の介護については、同居している配偶者や子供が、それにあたることが多いですね。
兄弟がいても、別居している場合には「保護責任」がないということになっています。
同居をするということは、親の面倒を見るということが、必然的についてくるのです。
介護放棄の手続き方法
「介護放棄の手続き」というものはありません。
ですが、「自分だけでは介護が無理!」と思ったら、迷わずに役所の福祉課に行きましょう。
または、地域には「地域包括支援センター」というところがあります。
介護についての相談に乗ってくれるところです。
そこに行けば、おそらくいろいろな方法を教えてもらえます。
介護サービスを受ける手続きも教えてもらえますし、中には自分が介護をしなくてもいい方法もあります。
介護にかかる費用についても、相談できるので安心です。
「自分の親が病気になった、なんとなく介護が必要かも?」と思ったら、すぐに行動に移すのが、介護放棄をしなくて済む最善の方法とも言えますよね。
その行動こそ「介護放棄の手続き」の一歩と言えるでしょう。
「もう介護を放棄したい」と思ったらどうすべき?
介護をしたくないという気持ちを持つことが悪いとは思いません。
これまでの家族関係もあるでしょうし、人それぞれに思うところがあるでしょう。
もう介護を放棄したいと思ったら、自分での介護はやめよう!と思えばいいのです。
介護施設を使うのも一つの方法です。
「親を施設に入れることが、介護放棄」という人がいます。
でもそれは介護放棄ではなく、親も自分も、安心して生活できる場を提供しているのですから、決して放棄ではありません。
自宅で親の面倒を見ることだけが介護ではないのです。
施設入所を含め、介護サービスを十分に活用するのが、れっきとした介護ですから、すべてを自分がやらなければと思うことが、介護放棄につながりやすいと思ってくださいね。
まとめ
どこにも誰にも相談できず、介護を辞めてしまう、逃げてしまうというのが介護放棄。
介護放棄をして、介護が必要な人が怪我をする・命に係わる状態に陥るのではまずいですが、
周りの力を借りて、親も自分も安定した生活を送ることができれば、介護放棄とは言いません。
まだまだ親が元気でも、いつどうなるかは誰にもわかりません。
介護は育児よりも先が見えない大変なことです。
一人で抱え込んで介護放棄とならないよう、頼れる存在がどこにいるか把握しておきましょう。